星空ニュース
「そうだったのか! 彗星」彗星の誤解を解く
2013.3.1更新

百武彗星(1996.3.27)
太陽と地球の距離の1⁄10まで地球に近づいた百武彗星は、見かけ上の尾が90度以上にもなりました。頭部は約0等級(こと座のベガと同じぐらい)で、肉眼ではサーチライトが夜空に浮かんでいるような見え方に。(撮影:井川俊彦)
1976年、ウェスト彗星。1986年、ハレー彗星。1996年、百武彗星。1997年、ヘール・ボップ彗星。そして2013年! パンスターズ彗星が!!!
「彗星を見てこの道を選びました」と多くの天文プロや愛好家に影響を与えてきた彗星に、皆さんが出会う機会がいよいよやってきました。
ロマンと神秘に満ちた彗星の姿を目にするその前に…“実はそうではなかった!”というありがちな誤解を解くとともに、彗星の正しい知識を身につけておきましょう。
パンスターズ彗星は二度と見られない!
惑星が太陽の周りを回っていることと同じように、彗星も円軌道を巡っていて何年かおきに見られる。…と思われがちですが、全ての彗星がそういうわけではありません。
1986年のハレー彗星はだ円軌道を回っているので、約76年に1度の周期で地球から見ることができます。一方、今回訪れるパンスターズ彗星はだ円軌道になっていないので、再び地球から見える位置に戻って来ることはなく、今回が最初で最後の出会いとなるのです。
彗星の尾は太陽に近づいて初めてできる!
彗星の正体は岩石や有機物の混ざった氷。それがどうしてあのような尾を伸ばして光るのかというと…、
まず太陽から受けるエネルギーで彗星本体からちりが吹き出し、尾が出始めます。そして彗星本体やその周囲にちりが拡散したコマと呼ばれる部分と、太陽の反対方向に伸びたちりやガスでできた尾が太陽光を受けて明るくなるのです。ということは、太陽に近づいているとき以外は、尾が伸びることも光ることもなく、ただの“ちょっと汚れた雪玉”なのです(雪玉とは言え、直径は平均数km〜数10kmあります)。
また太陽に最も近づく日を近日点(きんじつてん)と言い、このころ最も明るくなります。しかし地球から見るには、近日点は太陽に近過ぎて観察しづらく、その前後が観察に適した期間となります。さらに彗星が地球に接近しているときも明るく、尾が長く見えます。
パンスターズ彗星の場合、近日点(3月10日)通過前は南半球でしか見られないので、日本で観察好機となるのは3月10日を過ぎてから。日没後の西空と日の出前の東北東の空で見られるようになります。
えっ! そっちに進むの?

前述のように彗星の尾は太陽のエネルギーによって、太陽と反対方向に伸びます。ですから尾の向きと彗星の進行方向とは全く関係がありません。
彗星の姿を写真などで見るとつい飛行機雲と同じように想像して、尾と逆方向に進んでいると思いがちですが、そちらには常に太陽があるので、もしその方向に進むと太陽と衝突してしまうことになるのです。

シュッと過ぎ去ってしまうわけではなかった…。
明るい彗星は何年かに一度しか訪れないだけに、実際に目にしたことはまだないという人も多いでしょう。流れ星と同じように、彗星もシュッと一瞬で去って行くと思われているかもしれませんね。でも彗星は惑星などの星と同じように、星座の中にとどまって見えます。
流れ星が光るのは地球の大気圏での現象ですが、彗星は惑星などと同じように遠い宇宙にあります。例えば木星は平均時速4万7,000kmというとんでもないスピードで動いて(公転)いるのに、夜空を見上げると肉眼では止まっているかのように見えますよね。彗星もそれと同じで、1日たつと星座の中を少しずつ移動しているという程度です。
今年の冬にもまた彗星が…!?

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この春、数年ぶりに日本でも見られる肉眼彗星(肉眼で見られる彗星)として期待が高まっているパンスターズ彗星。ところがなんと!今年の11月にもアイソン彗星が近日点を通過することがわかっています。計算上はかなり明るい彗星となるはずで、12月に入ると日本からも肉眼で見えるようになるかも!?
ただしこれらはあくまでも予測の話。過去にも彗星は予測ほど明るくならなかったり、逆にもっと明るくなったりしました。
パンスターズ彗星もアイソン彗星も、そのときになってみないと分からないことはたくさん。皆さんも未知なる天体の目撃者となってみましょう!
科学情報誌「So-TEN-Ken」Vol.46より転載。