星空ニュース
2013年の最後を飾る大彗星 アイソン彗星、いよいよ!
2013.10.31更新

<近日点通過6日後のパンスターズ彗星>
2013年3月10日に太陽に最も近づいたパンスターズ彗星を、その6日後の3月16日に望遠レンズでとらえた姿です。予報された光度よりもやや暗かったものの、空の条件の良いところでは肉眼でも見られ、双眼鏡ではハッキリ彗星らしい尾が観察できました。
(撮影 : 井川俊彦)
2013年は彗星YEAR!大本命と言われるアイソン彗星がいよいよ太陽、そして地球へと近づいてきます!
このアイソン彗星は、発見された当初から「史上まれな明るい彗星になるだろう」と天文のプロから騒がれたほど。
実際にどれぐらいすごい彗星なのか、その理由に迫ってみましょう。
巨大な太陽のエネルギーを物ともせず、向かって行く彗星たち
彗星の正体は巨大な雪玉。自ら光ることはありません。
それが太陽に近づくことによって、太陽の光を反射して明るくなり、私たちに見えるようになるのです。
つまり太陽に近ければ近いほど、明るい!
そしてアイソン彗星は「とんでもなく太陽に接近する!」と予測されていて、恐らく天体望遠鏡や双眼鏡がなくても肉眼で存在が確認できる肉眼彗星になると言われています。
例えば太陽の直径を12cm(CDと同じ)程度まで縮小して考えると、その円周から7cmぐらいのところをアイソン彗星は通過して行くのです。

<アイソン彗星の軌道>
11月29日に太陽に最も近い地点を通過した後、12月27日には地球に最も近い地点を通過します。

<太陽に向かっていく彗星「サングレーザー」>
撮影の際、太陽は遮光板(中央の赤い円)で覆われていて、白い円で太陽の大きさと位置を示しています。
©The European Space Agency and NASA
このように、太陽にとっても近づく彗星をサングレーザーと言います。
中でも有名なのは、1965年に彗星捜索家の池谷薫さん、関勉さんが発見した池谷•関彗星。
この彗星は太陽の表面から約45万kmの地点を通過し、そのときの明るさは満月を上回る−17等級にもなり、昼間でもはっきり見えたそうです。
今回のアイソン彗星は太陽の表面から約83万kmの地点を通る予測ですが、それでも満月ぐらいの明るさになるのではないかと言われています。
このようにサングレーザーは太陽を物ともせず果敢に近づいて行くのですが、それゆえに悲しい運命が待ち受けていることも。
彗星本体の核と呼ばれる部分が小さいと、猛烈な太陽のエネルギーに打ち勝つことができず、分裂、崩壊、蒸発…、つまり消滅してしまうことがあるのです
!
2011年にクリスマス大彗星となったラブジョイ彗星は、核の大きさが数百mと小さかったため、蒸発してしまうだろうと予測されていました。
ところが!実際には無事に近日点(※1)を通過し、池谷•関彗星のように明るく雄大な尾をたなびかせた勇士で人々を沸かせたのでした。
そして今回のアイソン彗星は…?
安心してください。核の大きさは数kmほどあり、蒸発の危険はないと言われていて、太陽の近くを通過した後、地球にも近づく予定です。
※1…近日点=その彗星の軌道上で、最も太陽に近い地点。
彗星はどこからやってくる?

オールトの雲
彗星は軌道の種類によって3種類に分けられます。
軌道がだ円になっていて、同じ場所を周回しているものは周期彗星といい、太陽に近づいては離れて行き、また太陽に近づいてきます。
中でも
① 200年以内で1周するものを短周期彗星
② 200年〜数万年で1周するものを長周期彗星
と言います。
また軌道がだ円になっていなくて太陽に近づいたら後はどこかへ行ってしまって、二度と戻って来ない彗星は
③ 非周期彗星
と言います。
アイソン彗星は、この非周期彗星で、今回を最後にもう二度と会えない彗星です。
アイソン彗星が発見されたのは昨年ですが、実はそれまでに数百万年という長旅が続いていました。
その旅の出発は、私たちのいる太陽系からはるか遠くに存在すると言うオールトの雲。
先に説明した長周期彗星と非周期彗星はみな、このオールトの雲からやってくると言われています。
雲といっても、ビーチボールのように球殻状になっていて、そのビーチボールの中に太陽系が、そのまた中に地球や太陽が存在するのです。
そしてオールトの雲から太陽までの距離は1万AU〜10万AU(※2)、太陽と地球の距離の1万〜10万倍というわけです。
それにも関わらず、太陽の強烈な引力によって、全ての彗星は太陽に引き寄せられ、太陽に向かって旅立つのです。
※2…AU(天文単位)。太陽と地球の距離を1AUと決めている。1AU=約1億5千万Km。
科学情報誌「So-TEN-Ken」Vol.48より転載。