星空ニュース
3.9は日食! パクッと欠けた太陽を見てみよう!
2016.2.15更新

<部分日食>
2012年の金環日食のときに撮影したもの。端から徐々に太陽が月によって欠けていきます。(2012.5.21) 撮影 : ©大野裕明
2012年に日本全土を沸かせたあの日食以来! 4年ぶりとなる今年3月9日(水)にまた日本全国で日食が見られます。
日食は太陽と月が重なって太陽が欠けて見える現象。
太陽の一部を月が隠して、パクッと端をかじったおせんべいのような太陽をぜひみんなで見てみましょう。
ただし太陽光はとても強くて、人間の目やカメラを破壊してしまうほどの威力があります。
ここで正しい観察や撮影方法をマスターして、楽しく安全な日食観察に挑戦しましょう!
場所が変われば日食も変わる!

<各地の食分>
地名の下の数値が食分です。皆既日食帯と書かれている地域では皆既日食が見られます。
地球は太陽の周りを回っていて、月は地球の周りを回っています(公転)。この3つの天体が太陽−月−地球の順に並ぶと日食が起こります。
太陽−月−地球を結んだ線がぴったり一直線になったとき、太陽が全て月に隠れる皆既日食や、太陽の端だけリング状に見える金環日食となるのですが、それは地球上のどこにいるかによって見え方が変わってきます。
今回の日食はインドネシアなど東南アジア~太平洋上の一部で見ると皆既日食となるのですが、日本では太陽の一部だけが月に隠れる部分日食として見えます。
どれくらい太陽が欠けて見えるのか(食分)も場所によって違います。
「食分1.00」は100%月に隠れる状態、つまり皆既日食を示します。
日本の場合、最大が小笠原諸島の父島で0.483。北へ行くほど小さくなり、札幌では最も欠けた状態で0.128となります。主な地域の食分は右のイラストを参考にしてください。
日食観察の基本をマスターしよう!

<各地の日食の始まりと終わり、食の最大の時刻>
今回の日食は大体10:00頃に太陽が欠け始め、最も欠けるのは11:00前後。終わるのは12:00前後です。
これも食分と同じように地域によって差があり、西へ行くほど早くなります。各地の時刻は右の表を参考にしてください。
観察していると太陽の欠け具合は見る見る間に変わっていきます。
これは、宇宙という空間の中で月が動いていく、さらには地球も動いている、そんなスケールの大きさを実感できる絶好のチャンスです。
日食の観察の方法は大きく分けて2通り。
日食グラスなどを使って太陽そのものを見る方法と、投影板などに太陽の像を映して間接的に見る方法。比較的安全なのは間接的に見る方法です。
太陽光は想像以上に強く、有害な赤外線なども発しているので、太陽そのものを見る場合には細心の注意が必要です。

<日食の始まりから終わりまでの欠け方>
東京の場合。地域によって欠ける大きさや時刻は異なります。
日食グラスで太陽を見てみよう!

太陽観察専用の日食グラスは強烈な太陽光線を十分に減光し、人間の目に有害な赤外線などを遮断する特殊な構造になっています。決して黒い下敷きや撮影用フィルターなどを代用しないでください。
また日食グラスに付属の説明書をよく読んで、正しい使い方をすることも大切です。
日食グラスでの観察は、太陽そのものを見ることになるので輪郭がハッキリとしていて、太陽が欠けていく様子がつぶさに観察できます。運が良ければ大きな黒点も見えるかもしれません。
天体望遠鏡+太陽投影板

天体望遠鏡を使う場合は太陽投影板という、太陽の像を投影するための道具を接眼レンズの先に接続して観察します。望遠鏡のレンズを目でのぞいて直接太陽を見ることは絶対にやってはいけません。
太陽投影板には望遠鏡のレンズで拡大された太陽の形が映るので、とても鮮明です。
みんなで一緒に見られるメリットもありますし、同時に投影された太陽像を撮影することもできちゃいます。
木漏れ日やピンホールも日食の形に!?

<部分日食中の木漏れ日>
撮影 : ©藤井旭
小さな穴を通り抜けた光が物の姿を映し出すピンホールカメラの仕組みを利用すると、日食中の欠けた太陽の像を見ることができます。
まず厚紙に数mm程度の穴を開けます。その穴を通った太陽の光は、その先の地面や壁などに太陽の形を映し出します。映し出される場所に白い紙などを置いてきれいに見えるようにすると良いでしょう。投影する紙までの距離は、穴の直径の約200倍が適切です。
木漏れ日も同じ原理で地面に太陽の形を投影してくれます。
右の木漏れ日の写真は、欠けた太陽の形がいくつも地面に投影された様子です。
カメラで日食を撮影したい場合は…
カメラをそのまま太陽に向けるのは絶対にダメです。太陽の強い光でカメラが壊れてしまいます。
撮影する場合には太陽撮影専用の減光フィルターという物を使い、光学ファインダーは絶対にのぞかないこと。画角やピントを確認するときは液晶画面を使うようにしてください。
そのほか、注意すべきことは減光フィルターの説明書でしっかり確認してから撮影に臨みましょう。
「日食見てみない?」で集まろう!


日食は何年かに1回のチャンス。次は2019年まで日本では見られません。
今回の日食は平日の昼なのですが、できれば家事や仕事の手を少し休めて日食グラスやピンホール、木漏れ日などを利用して日食を見てみませんか?
学校があるなら、前もって先生にこのページを見せながら「3月9日にみんなで日食の観察をしませんか」と提案してみてはどうでしょう?
もしかしたら理科室に天体望遠鏡と太陽投影板が眠っているかもしれませんよ。
さらにこの前日は木星が衝(地球から見てちょうど太陽の反対方向にくること)という状態になって、最も見頃となります。
その木星と昼間の日食話を主役にしたスターパーティを計画するのも素敵です。
「日食見た? どうだった?」いつもとはちょっと違った話題に花が咲きそう。
<オススメ 天体望遠鏡用オプションパーツ>
太陽投影板Bセット
●お手持ちの屈折式の天体望遠鏡に取り付けて、太陽の像を投影するパーツです。日食のときは、白い丸い板の部分に欠けた太陽の形が映し出されます。
科学情報誌「So-TEN-Ken」Vol.58より転載。一部再編集。