全国家庭顕微鏡普及協会

第3部
第2話 林で遭遇した“動く模様”

「この間、おじいちゃんのお供でキノコ狩りに行ったときのことです。
キノコはおじいちゃんにまかせておいて、ボクは何かおもしろい虫はいないかなと林の中を歩き回っていたとき、模様のついた落ち葉を見つけたんです。
その模様は網目になっていて、ちょっとベタベタしました。
もしお母さんに見せたら『気持ち悪いから捨てなさい!』って言われちゃいそうだけど、なんだか奇妙な感じがおもしろくてしばらく眺めていました。
その後、また虫を探したりおじいちゃんのキノコ採りを手伝ったりしていたんだけど、やっぱりあの変な葉っぱが気になって、さっきの場所に戻って見てみると…、なんと! 模様がちょっと変わっていたんです!
思い違いかなとも思ったけど…、家に帰ってからもどうしても気になって仕方がないんです」

これは全国家庭顕微鏡普及協会会員No.811南方熊次郎君(10歳)から、協会に寄せられた手紙です。
熊次郎君は、なかなか興味深い対象に出会ったようですね。
ではまず、その“動く模様”を観察する方法を説明しましょう。

“動く模様”を観察してみよう

準備するもの

  • スープ皿のような深さのある皿
  • ペーパータオル
  • 消毒用アルコール(※1)
  • 精製水(※1)
  • オートミール(※2)
  • 食品包装用ラップ

※1…薬局などで手に入ります。
※2…オーツ麦(燕麦)を原材料とするフレーク状の食品。スーパーなどで手に入ります。


画像 ルーペで見た粘菌

ルーペで見た様子。網の目のように広がっています。粘菌は、こんなに大きくてもひとつの細胞でできています。それが自由に形を変えるなんて、とっても不思議ですね(10倍)。

まずはお皿を使って粘菌のベッドを作りましょう。
他の細菌やカビが増えると困るので、あらかじめお皿を消毒用アルコールで軽く洗って充分に乾かしておきます。
お皿の底にペーパータオルを敷いて精製水でたっぷり湿らせ、そのまん中に、落ち葉の“模様”がついた部分を切って置きます。
エサは食品のオートミール。
葉の周りに3、4粒置いて、食品ラップでフタをします。
薄暗い場所に置いておき、半日ほどすれば“模様”が動いたことに気づくでしょう。

イラスト 粘菌のライフサイクル

<粘菌のライフサイクル>

実はこの“模様”…、「粘菌」というれっきとした生物なんです。
しかし植物でも動物でもない、とても奇妙な生き物です。
例えば、枯れ木や枯れ葉の中で有機物を食べて生きているところは植物っぽいですが、ゆっくりだけど植物よりもずっと速く動いて(1時間に数cmぐらい)エサをつかまえたりするところはまるで動物。
このちょっと不気味な生態は、とても興味をそそられるユニークなものです。


さらに粘菌は、周りの環境によっていろいろな形に変化します。
カビと同じような胞子の状態から、アメーバのような形、アメーバの細胞質、核が融合してできる接合体、網の目のように広がる変形体、光があたると子実体という、胞子をつくる形になります。
水とエサをやれば何か月も生きているので、ルーペで観察してみましょう。

粘菌を顕微鏡で観察してみよう

画像 寒天培地

寒天培地の上にオートミールと粘菌を直接のせてみました。粘菌を寒天ごと切り取って顕微鏡で観察します。粘菌の部屋は充分な水分がポイント。粘菌の活動にちょうどよい気温の春から夏にかけてなら、育てるのも観察するのもベストです。

今度はペーパータオルの代わりに、寒天培地というものを作ります。
100ccぐらいの水に約2gの粉寒天を入れ、鍋で熱して溶かします。
これを料理用のバット(深さのある皿でも可)などに流して冷まし、固まったら適当に切って、先ほどの粘菌の部屋に置きます。
粘菌が寒天の上まで移動したら、その部分の寒天を切り取ってスライドグラスにのせます(お皿に作った寒天の上に直接粘菌を培養するのもいいでしょう)。
粘菌の体の中で養分や水分が移動している様子も見ることができます。
観察したら、ぜひ全国家庭顕微鏡普及協会までレポートしてくださいね!

やけどに注意。

えさのオートミールにたどりつくと粘菌は覆いかぶさり、たどりついた管が太くなります。他に枝分かれして伸ばした管は徐々に細くなり消失します。網の目のように広がっているのは、餌を探すためなんですね(左:10倍)(右:40倍)。

  • 画像 寒天培地
  • 画像 寒天培地
  • 画像 粘菌40倍

    顕微鏡で見ると、血管のように広がる迫力のある姿! よく見ると、管の先端が少しずつ伸びているのがわかります(40倍)。

  • 画像 粘菌80倍

    さらに拡大して見ると、粘菌の体の中をいろいろな物質が移動しているのがわかります。この運動は「原形質流動」と呼ばれ、養分などを運ぶ仕組みです。観察していると、およそ2分周期で流れの向きが変わるのがわかります(80倍)。

身近な“菌”を顕微鏡で見てみよう

画像 SB-500

<オススメ顕微鏡>
SB-500
扱いやすさを重視したスタンダードタイプの顕微鏡。別売のアダプター等を使用すれば、コンパクトデジタルカメラ、一眼レフカメラ(デジタル、フィルム)による顕微鏡写真が撮影できます。

商品詳細

同じ“菌”でも身の周りで生きている細菌は粘菌とは違う種類の生き物で、1mmの数十〜数百分の1という小さなものです。
そんな小さな細菌を、顕微鏡を使って比較的簡単に見つけられる方法を紹介しましょう。
倍率は100〜400倍程度にして、小さくて動き回っている粒が見つかったら、それが細菌です。
口内細菌
人間の口の中には、実は何万という細菌が住んでいます。
口の中のネバネバや、歯の根元などについているかす(プラーク)をつまようじなどで採取し、スライドガラスに塗り付けます。
そのまま、あるいは精製水を1滴たらしてカバーグラスをかけ、かるく押しつぶして観察します。
土中細菌
土の中は細菌の宝庫です。
有機物を分解して植物が利用できる養分に換えるなど、環境にとって大切な働きをしています。
観察は、消毒用アルコールでゆすいで乾かしたコップに、庭やプランターの土を5cm3ほど入れ、同じ量の精製水を加えてよくかき混ぜます。
1分ほど置いてできた上澄みをスライドグラスにとり、カバーグラスをかけて観察します。

科学情報誌「So-TEN-Ken」Vol.22より転載。

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