全国家庭顕微鏡普及協会

第5部 一番身近なミラクルワールド - 人体
第4話 哺乳類と魚類の血液比べ!

画像 ヒトの血液

参考写真 : ヒトの血液。赤血球はやっぱり哺乳類であるブタの血液に近い、つぶれた球の形(400倍)。

最も身近にあって、最も魅力的な観察対象である“ヒトの体”。
今回はいよいよ血液に迫ります。
でもヒトの血液を採取するのはちょっと危険(※1)。
だから今回は同じ哺乳類の代表としてブタの血液を観察しましょう。
また魚類の代表としてサンマにもご協力願います。

※1…血液は様々な病気の感染源となり、採血した傷口からばい菌が入ることもあるので、個人的な観察を目的に人間の血液を採取することは避けましょう。

血液を求めて、いざスーパーへ!

画像 肩ロース肉

よーく見ると、スーパーに並んでいる食用肉でもこのような血液の染みが見つかる場合があります。売場で探してみましょう。ちなみに今回購入したのは肩ロース肉。血液粒さえあれば部位はどこでもOKですので、予算にあったものを買いましょう。

「ブタの血を採取」と聞いてたじろいだ人もいるかもしれませんが、安心してください。
スーパーマーケットの精肉売場で目的の観察対象は見つかります。
売場の食用肉は、商品にする途中で血液のほとんどを取り除かれているので、血液を採取するのはちょっと困難ですが、顕微鏡観察に必要な量はほんのわずか。
“血まなこ”になって探してみましょう。
血液の小さな粒が見つかったら、すかさずそれをGET!
そうそう、ついでに鮮魚売場にも寄ってサンマも入手しましょう。

画像 サンマ

この辺りを開くと心臓が取り出せます。
サンマはいい観察対象を得るためにも、後で美味しくいただくためにも新鮮なものを。目が充血していなくて澄んでいる物を選びましょう。



画像 ブタの血液

400倍で見たブタの血液。赤血球はほとんどが丸く見えますが、中には扁平な形をしたものも。

画像 サンマの血液

サンマの血液を1,000倍で観察。つぶれた球形の赤血球のほか、まん中に小さな粒が見える血球があります。

ブタはわずかな血液粒をようじなどで採ってスライドグラスの上に。
またサンマはお腹を開くと、エラに近い部分に1cm程度の三角の赤い塊が見つかります。
これはサンマの心臓。
ここから血液が採取できます(ちなみにサンマの心臓は珍味としても好評。塩焼きでどうぞ)。
それぞれの血液をスライドグラスに載せたらすかさずカバーグラスをかぶせます。
100倍ぐらいで見ると、どちらの血液にも丸い小さな粒がたくさん含まれているのがわかります。
これは血球(主に赤血球)と呼ばれる細胞の一種で、血液のほぼ半分を占める成分(残りは血しょうと呼ばれ、大部分が水)。
赤血球は400倍ぐらいで観察すると、つぶれたあんパンみたいな形であることがわかります。
やや赤く見えるのは、ヘモグロビンという赤い色素を含むため。
ヘモグロビンは鉄を含んだタンパク質で、酸素と結びついて運ぶ役割があります。


画像 染色したサンマの血液

ニュートラルレッドで染色したサンマの血液。血球のまん中に細胞核が赤く染まって見えている(1,000倍)。

画像 染色したブタの血液

ニュートラルレッドで染色したブタの血液。細胞核は見られず、血球全体が染まっている。変形しているのは、染色液の水分を吸ったためと思われる(400倍)。

こうして見てみると、ブタもサンマもそれほど違いがないようです。
では次に、ニュートラルレッドという染色液を血液に1滴たらしてカバーグラスでふたをして見てみましょう。
するとサンマの赤血球では、ふつうの細胞と同じように細胞核が染色されて見えるようになります。
ところがブタの赤血球には…細胞核がない!
実はこれは生物が魚類からほ乳類に進化していく途中で起きた変化だと言われています。
赤血球が核を失う反面、酸素を運ぶ能力をアップさせ、体内により多くの酸素を運べるようになったというわけです。
血液の観察ひとつでも、このような生物進化を知ることができちゃうんですよ!

血液以外の○液も観察してみよう!

生物の体の中には血液以外にもいろいろな「液」があります。
唾液や尿は顕微鏡で見ても目立った成分がみつからずおもしろくないですが、こんなのはちょっと楽しいですよ。

  • 画像 牛乳

    牛乳を観察。きらきら光る球のようなものがたくさん浮かんで、写真ではわかりませんが、ぴくぴく動いて(!)います。かといって生きているわけではありません。水の分子が熱エネルギーで運動して、たえずぶつかって動かしているのです。これは発見者の名を取ってブラウン運動と呼ばれています(1,000倍)。

  • 画像 イカスミ

    こちらはスルメイカから採取したイカスミ。内臓には矢印の部分に墨袋がついているので、ここから取り出します。透過光に加え、懐中電灯などで横からも光をあてて観察するとこのように見えます。光を通さない黒い色素粒が散らばっていて、これは日焼けでできる色素と同じメラニンという物質です(100倍)。

  • 画像 イカ

科学情報誌「So-TEN-Ken」Vol.33より転載。

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