全国家庭顕微鏡普及協会

第11部
第2話 脅威の若返り術 人類はゾウリムシに学べ!?

ゾウリムシ

理科の教科書にも載っているゾウリムシ。このスケルトンボディの中に、驚くほどの機能が備わっています。シュンシュン動き回る素早さも、見もの(150倍)。撮影 : 青柳敏史

懐かしい響きのゾウリムシ。
理科の授業ではひたすら器官の名前などを覚えますが、それだけで終わってはもったいない!
お掃除ロボットも真っ青の高性能センサーと俊敏な動き、食べる・消化する・排泄するをそのスケルトンボディの中で完結するオープンさ、さらには独自の若返り術まで持つという。
その脅威のメカニズムをちょっとのぞいてみましょう。

未来の生活はゾウリムシにかかっている!?

英語で「スリッパ微小動物(slipperanimalcule)」…、それが草履虫(ゾウリムシ)。
“いかにも”な命名をされてしまった単細胞生物ですが、その高性能ぶりには目を見張る物があります。
体中に数千本という毛(繊毛)が生えていて、その移動の様子はビデオの早回しかと思うほど俊敏。
この繊毛がセンサーの役割も果たしていて、何かにぶつかるととっさに方向を変え、前後左右への移動はもちろん、反転、全回転、なんでもこなします。
また「エサかな」と思ったら口(細胞口)に入れ、「異性かな」と思ったら生殖(接合)を始める…、とても脳も目もない生物とは思えない判能力を持っています。
このとっても楽しげなチョコチョコした動き…、見ているとお掃除ロボットを連想してしまうのですが、実はなんと!ゾウリムシはお掃除ロボットをはじめとする様々な移動ロボットの研究に役立てられているのです。

“生きる”システムを見られます

ゾウリムシの分裂

ゾウリムシが分裂している様子。撮影 : 斉藤篤


ゾウリムシの器官の名称

ゾウリムシの器官の名称。理科のテストに出ますよ!?

ゾウリムシの大きさは、長さ100〜150µm(マイクロメートル)、幅40µμm程度。
人間の髪の毛の太さが平均60〜90µmなので、肉眼でも「何かいる!?」ことは確認できます。
田んぼや沼、川などの淡水で、比較的簡単に見つけることができ、メダカやシュリンプなどのエサとして販売もされているので、皆さんもぜひ観察に挑戦してみてください。
ゾウリムシは内部がスケスケ状態なので、顕微鏡で見ると器官がよくわかります。主に代謝にかかわる大核と、生殖に関わる小核という2つの核。
体液の調整で適切な浸透圧を保つための収縮胞、餌を取り込む細胞口と消化を行う食胞、そして排泄を行う細胞肛門など、単細胞なのに“環境への対応”、食事〜排泄までこなせる高性能な体を持っています。
体が透明ですからもちろん、食べて消化して排泄する様子などは顕微鏡で丸見え!
一日中でも眺めていたい、かわいいヤツです。

子供を生むと親も若返る!?

ゾウリムシの生殖方法は2種類あります。
まず1つは細胞分裂、つまり1匹が2匹に、2匹が4匹に増えていく無性生殖。もう1つは、性の異なる2匹が接合して新たな1匹が生まれる有性生殖
実はゾウリムシは、初めて“性”が見つかった原生生物(※)なのです。
無性生殖の勢いはものすごくて、環境が良ければ1日に3回も細胞分裂して、とてつもない数に増えてしまうのですが、残念なことに1匹のゾウリムシが細胞分裂できる回数は大よそ決まっていて、その数に達すると死んでしまいます。
一方、無限の命とも言えるのが有性生殖(接合)。
2匹のゾウリムシが接合すると子供が生まれるだけでなく、親同士の遺伝子の交換が行われて、親の方も新しく生まれ変わるというお驚きの事実!
実際に、人間の老化防止の研究にゾウリムシの情報が利用されているのです。
実はものすごい能力を持っているゾウリムシ、人間の未来や理想をすでに実現している生物なのかもしれません。

※原生生物 : 細胞が1つしかない生物(単細胞生物)のうち、細菌などを除いたもの。

動く! ゾウリムシ

科学情報誌「So-TEN-Ken」Vol.54より転載。

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